すず奴のマタニティライフ in US vol.5 〜入院編〜

すず奴です。ボストンもかなり暑くなってきました。といってもほぼ外出してませんけども……
今回は出産後から退院までのことを思い出しながら書きます。今回も長文です。

陣痛〜出産までの日記はこちら

◎入院、48時間

L&Dから個室の病室に移動して、これから2晩を過ごす。
このフロアには出産を終えた女性のための病室と、Nursery Room(新生児室)しかない。以前乳がんの手術で入院したときも乳がん患者専用フロアだったなぁ、と思い出す。

アメリカでは医療費が高いこともあり、普通分娩は48時間、帝王切開の場合でも72時間しか病院に滞在できない。いつ時間を区切るかは病院によって違うと思うけど、私が入った病院は朝11時と夜8時で区切られていて、私は朝7時半に病院に来たので、朝11時区切り。なので翌々日の朝11時まで滞在できる。(実際にはもう少し緩くて、11時〜午後1時の間に退院してねと言われた。)

病室に移動したのが確か夜10時頃。もうカフェテリアは閉まっていたので、夫が日本食の晩ご飯をテイクアウトしてくれた。日本食、ありがたや〜。

定期的にナースが来て、血圧・体温の計測、そして授乳時間とおむつ交換についてチェックが入る。授乳時間とおむつ交換についてはbreastfeeding diary(授乳日記)に記録をつける。2週間分の表があり、産婦人科を退院した後、小児科に行く際に持参する。

breastfeedingdiary
Breastfeeding diary(授乳日記)

私がうっかりしていたというか甘えていたというか、入院中に授乳とかおむつ交換とか沐浴とかひと通りのやり方を教えてもらえると思っていたのだけど、そんなことは無かった。「教えてください」とお願いすれば教えてもらえたのかもしれないけど、”お願いしなきゃ教えてもらえない”というシチュエーションであることを理解できなかったのと、産後で身体が痛いのと、授乳で眠れないのとで頭が回らず、教えてもらう機会を得ることもないまま退院になった。

と書くと、アメリカの病院ってぞんざいね!って思われるかもしれないので補足。ナースから教えてもらえたことももちろんある。

・スワドリングのやり方
・授乳時の赤ちゃんの抱き方、乳首の咥えさせ方
・スポンジバスの手順

スワドリングとは、赤ちゃんを寝かすときなどに布ですっぽりくるむこと。日本でいうおくるみと同じかな?新生児は特に、モロー反射などで手足が勝手に動いてしまい、その動きでびっくりして起きてしまうことが多いので、それを防ぐべく手足を包み込む。胎内にいたときのような密着感もあるから、赤ちゃんは安心して眠れる。

2105_KIDSPOT-BABYSWADDLE-1000PX-V2-1-660x660
How to swaddle your baby(画像:Kidspotより)

アメリカでは、新生児を寝かせる場合、crib(ベビーベッド)に敷き布団を敷き、その上にスワドリングした状態で寝かせるよう指導される。枕も、掛け布団も無し。cribの中には敷き布団以外、何も入れてはいけない。窒息死する要因を排除するためだ。
そして以前は頭の形をまぁるく保持するためにうつぶせで寝かせることが一般的だったようだけど、これまた窒息死を防ぐために、今では仰向けで寝かせるのが一般的。

抱っこの仕方と乳首の咥えさせ方は日本で教わるのと同じだと思う。枕などを使ってお母さんがリラックスでき、かつ赤ちゃんをがしっとホールドできる体勢と、赤ちゃんが口を大きく開けてlatch(咥える)するやり方を教わった。

スポンジバスは湯船を使わずに赤ちゃんを洗う方法。スポンジというか、布を使う。布をお湯につけてしぼり、顔を拭く。次にベビーソープをつけて身体を拭き、お湯にひたして再度身体を拭いて石けん成分をぬぐいとる。次に洗面所に行って髪の毛をお湯で濡らし、ベビーシャンプーをつけてごしごし洗った後、お湯ですすぐ。楽だし、しかも「毎日やる必要は無いのよ。週に2〜3回くらいでいいの」とのこと。(!)

これにはボストンのお風呂事情も強く関係していると思う。ボストンには古い建物が多く、古いアパートは水回りがとても悪い。各部屋に洗濯機を置くことができないため、コインランドリー使用が必須。お風呂もシャワーだけか、浅いユニットバスが殆ど。ちなみに私のアパートだと、お湯がタンクから供給されるようになっていて、一度に出るお湯の量に限りがある。湯船にお湯をはると髪の毛を洗う頃にはお湯が水に変わってしまうのでシャワーしか使えないし、二人続けてシャワーもできない。こんな水事情と、割と乾燥した気候であるため「スポンジバスで週に2〜3回」と教えられるのだと思う。

なお、私はいただきもののミキハウスのふくらますお風呂(便利!)を使って、毎日沐浴させてます◎やっぱりお風呂がいいよねぇ……スキナベーブも使ってます◎

入院時、ラクテーションコンサルタントという、母乳指導をする人が3回ほど病室に来た。しかしおっぱいマッサージをしてくれるわけでもなく、母乳を増やす方法を教えてくれるでもなく、ただ「乳がんで右胸からしか母乳が出ないのよね?でもね、双子を持ったお母さんが片乳ずつで二人とも完母で育てた例もあるから大丈夫よ」とか、「母乳の出が心配なら、授乳後にpump(搾乳)しなさい」というアドバイスをくれるのみ。

「母乳がちゃんと出てるか不安なんです」と訴えても、「退院前に赤ちゃんの体重を計るんだけど、そのときに減り過ぎてなければ大丈夫だから」としか言われない。そう、

formula(ミルク)について、 全 く 何 も 教 え て く れ な か っ た

のだ。私が利用した病院は、カンガルーケアやSkin to Skin、Breastfeeding(母乳)といった、母親と赤ちゃんの身体の触れ合いをとても大事にしていて(その割におっぱいマッサージなどの具体的な指導は無かった…して欲しかった。)、formulaについては一言も触れられなかった。もしかしたらアメリカ全体的にそうなのかな?いや、そんなことは無いはず。だってアメリカにはformulaを選ぶにしても大まかに言って3種類も選択肢がある。powder(粉)、concentrate(濃縮液体ミルク)、ready-to-feed(そのままあげられる液体ミルク)だ。粉は粉として、濃縮液って!?液体ミルクって!?

液体ミルクは日本では販売されていないけど、販売を望む署名活動なども起きていて存在自体は認知されていると思う。粉を計る必要も、お湯をわかして溶かす必要もない。なんならお湯であっためる必要もない。室温のまま置いておいて、ぱかっと開けてそのまま赤ちゃんにあげられるのだ。便利!でも私は便利さよりも、ええっ赤ちゃんに室温のもの飲ませてもいいの?ってことが衝撃的だった。ミルクって37℃くらじゃないと赤ちゃんは飲みませんって耳にタコができるくらい日本だと言われると思うんだけど、液体ミルクは”赤ちゃんは室温でも飲む”ということを明示してるんだよ。ちょっとくらい冷たくても大丈夫なんだよ。これってお母さんたちにはありがたい情報じゃない?

私は完母にはできず混合で育児をしていて(その経緯についてはまた後日書きたい)、明治「ほほえみ」らくらくキューブを使ってるんだけど、作り方は「キューブを哺乳瓶に必要量入れ、そこに70℃のお湯をできあがりの2/3の量注ぎ、哺乳瓶をよく振って溶かした後、湯冷ましを足し入れ、再度よく振り、人肌ほどに冷ます」と書いてある。ちょっとした手間だ。なぜに70℃。

世の中には調乳用に70℃に保温するポットも売られている。しかし実際は沸騰したお湯を冷まさず使っても問題ないらしい。70℃と記載されているのは厚生労働省が定めた基準だから。沸騰直後のお湯で溶かすと確かに少量のビタミンなど壊れてしまう可能性があるけれど、いずれにせよ人肌程度にまで冷ます(ぐらぐらと何分も沸騰させるわけではない)ので、そんなに気にしなくてもよい、らしい。人肌くらいの温度が赤ちゃんにとっても美味しく飲めるのだろうけど、きっと少しくらい冷めても大丈夫。

81GtiXPrMVL._SX385_
粉を計る手間を省いた画期的な商品、明治「ほほえみ」らくらくキューブ

とにもかくにも、日本だと入院中にミルク会社の人が営業で来てミルクの作り方とか教えてくれたりすると思うんだけど、私はformulaについて全く何も教わらなかった。退院後にすぐ混合に変えたので、教わっておきたかった……というのが本音。

formulaといえば、これすごい!と思ったのがネスレ製の「The Babyness Machine」。ネスレが誇るエスプレッソマシン、ではなくミルク調乳マシン。concentrate(濃縮液体ミルク)のメリットを最大限に引き出していると思う。月齢に合わせてポーションを変える仕組み。Wi-fi接続ができて、アプリで作った量などを管理できる。高いけど、忙しいお母さんには便利かも。

machine-pdp-new-visual-cn-01-06-06-2016
The Babyness Machine

入院について話を戻します。
L&Dには一人しか立ち会いを入れられないけれど、病室には何人でも訪問客を入れられる。また簡易ベッドが一つ設置されているので、一人泊まることもできる。訪問する際にはフロア内のレセプションで受付をして、名札をつける。ただし、感染症を防ぐため、子どもの出入りは禁止されている。(おそらくマサチューセッツ州が求める予防接種を全て受けた年齢の子どもなら入れるんだろうと思う。)

一晩目は夫が、そして二晩目ははるばるボストンまでやって来てくれた母が、空港から病院に直行して泊まり込みしてくれた。私の母は4人の子どもの母親。4人とも自然分娩+完母+布オムツという、今流行のロハス(?)を先取りしまくった「母親の鑑」のような母。そう、無痛で産んで混合で一人目をえっちらおっちら子育てしている私からしたら、もう「すごい!」としか言いようがない。すごいよお母さん!タフネス!

アメリカの病院はセキュリティも厳しい。まず入院時、母親と立ち会い人(私の場合は夫)は名前入りのタグを腕につける。赤ちゃんも、生まれてすぐに母親の名前がついたタグと、出口のセンサーに反応するタグを脚につける。連れ出し・誘拐察知用だ。

退院日の朝が一番慌ただしくて、赤ちゃん生まれましたgreeting cardを作る業者が写真を撮りに来たり(有料、任意)、出生証明書の届けを出したり、medelaの電動搾乳機がもらえないことが判明したり、小児科医にアポイントメントを入れたり、赤ちゃん自身も体重を測られたり、マサチューセッツ州新生児検査のために採血されたり、と盛りだくさん。

アメリカでは出生証明書の届けを退院時までに提出しなければならない。それはつまり、名前を退院時までに決めておかなければならないということ。ミドルネームも付けることができる。これが通れば子どもは晴れてアメリカ人だ!わ〜わ〜わ〜

オバマケアのおかげで、たいていの保険であれば産後にmedelaの電動搾乳機が無料でもらえるのだけど、そしてその搾乳機が経産婦にすこぶる好評で私も「両胸いっぺんにしぼれるの!絶対もらった方がいいよ!」と言われたのだけど、私の加入していた保険は残念ながら対象外で、もらえなかった……ううう。

Medela-C
medela Breast pump

そしてなんと退院翌日に小児科医に行かなければならないと言われ、あわてて予約を入れた。翌朝7:30(!)の予約。は、早い…けどその時間に行くしかない。
そして赤ちゃんがもし100°F(38℃)以上の熱を出した場合、産婦人科でもなく小児科でもなく、救急病院に行くように言われた。電話予約などいらない、とにかくすぐに行きなさいと。救急病院ってどこですか、と聞いたらこの病院の向かいにあるよと教えられた。そ、そうだったのか。

新生児は生まれた後24時間はほとんど寝ている。なので最初の24時間は2-3時間おきに無理矢理起こして授乳するわけだけど、寝てばかりいるしおっぱいの吸い方もまだそんなに上手ではないため、生後1,2日は少し体重が減るものらしい。体重測定の結果、体重の減り具合が標準以内だったため、退院の許可が出た。(体重の減りが多すぎたらNICUに移されたのかもしれない。確認していないので不明だけど、多分そうなったと思う)

という感じであっという間に二日間は過ぎ、特に何事もなく退院となった。持参したベビーシートにちっちゃい息子をおそるおそる乗せて、uberに乗って帰宅した。運転手のおじさんも「生まれたばかりの赤ちゃんを乗せるなんて初めてだ、光栄だよ!」と言って喜んでくれた。




 

出産とは関係ないですが、動画でもおひとつ。
Tiny Desk Contestというコンテストに応募するために作った動画です。suzumikiライブより”A Wind from Saigon”だけを抜粋したもの。キャットスーツ着用。お楽しみください〜

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です