すず奴のマタニティライフ in US vol.4 〜出産編〜

生まれたー!
というか、生まれていたー!!

先日、男児を無事出産しまして、既にひと月が経ちました◎
今回は陣痛から出産までの日記を書きます。超長文です。

◎出産前日

すず奴は、焦っていた。
時間が、無い。

ここ数年、すず奴にとって何よりも大切なプロジェクトになっているボリショイsuzumiki。プロジェクトの一つの節目として、処女作「ごろごろにゃーん」をDVD化することに決めた。



忙しいメンバーに協力をお願いし、場所や機材を借り、貯金をはたいて動画を録った。カメラマンはアメリカ人。彼に編集もお願いしている。そう、アメリカ在住の日本人(すず奴)が日本在住のアメリカ人に撮影・編集してもらうという、ちょっとおかしなことになっている。

MVなどが得意で、明るくて動きのあるムービーを撮るそのカメラマンは、日本語を流暢に話す。しかし彼は日本語の読み書きができないため、すず奴はシナリオを英訳し、英語で編集の指示を出した。留学生っていうのが信じられないくらい、拙い英語で。

送られて来たラフ版には素っ頓狂な日本語が踊っていることもあった(送ったデータをコピペしてくれればいいのに何故?)。指示したタイミングと違う箇所で字幕が挿入されていることもあった(指示が細か過ぎるのか?)。日本語のミュージカルをアメリカ人に編集してもらうことにもともと無理があったんだろうし、何よりもすず奴の貧弱な英語力のせいが大きかったんだろう。

すず奴は学校の課題と妊娠特有の眠さ・気怠さと戦いつつ、カメラマンは拙い指示に忍耐を強いられつつ、修正の版を重ねた。バークリーの春セメスターも無事終わってしばらくした頃、素晴らしい最終版が送られてきた。あとはすず奴が、残された作業をやるだけだ。

(…小説風?に書いてみたけど、めっちゃ長くなるのでこのへんでやめます…)

残作業は映像への画像や歌詞入れ、オーサリング、ジャケットデザインとDVDコピー業者への発注とか。睡眠不足な期末試験を乗り切った反動か、はたまた臨月だからか、異常に眠くてだるくて作業に着手できず。その上、熊本とエクアドルに起きた地震被害へのチャリティコンサートのために応募した曲のアレンジも必要になってきて、ずるずると後回しに。

そんなこんなで予定日4日前。
ようやく焦りが出て来て作業していると、下腹部にすんすんとした痛みが。軽い生理痛のような痛み。「おお、これが前駆陣痛ってやつだな」とわくわくし始める。以前会った妊婦さんが「前駆陣痛が一週間続いてしんどかった」と言ってたので、前駆陣痛って何日か続くもんなんだろうなと思っていた。続きは明日やろうとキリのいいところで作業を終わらせて、寝る。

0時を過ぎたあたりから、不規則だった痛みが規則的に。7-10分間隔でやってくる。しかも時間が経つにつれ痛みが大きくなってきた。こりゃー、陣痛だ。病院でもらったパンフレットを慌てて引っぱりだす。

”初産の場合は陣痛が5分おきになったら病院に電話を。ただし病院から車で30分以内の場所に住んでいる人は3分おきになったら電話をしてください”

なな、なんですと……?(汗)
今でもけっこう痛いのに、さささ、3分おきになるまで我慢しろと……?(大汗)

朝7時。きっちり7分間隔になった陣痛がそりゃぁもう痛くて、無理デス〜と電話をかける。あえて苦しい感じを前面に出したら「じゃぁ病院まで来てください」と許可が出た。

uberに乗って病院に着いたのが7:30。痛くて歩けず車寄せでうずくまっていたら病院のスタッフが車椅子を持って来てくれた。産科で受付を済ませ、大部屋(?)へ。陣痛の間隔や胎児の胎動、子宮口の開き具合のチェックを受ける。この時点で子宮口が4cm開いていて陣痛も6分おきになっていたので、L&D(Labor and Delivery)へ移動となった。

ナースから割礼するかどうか確認され、麻酔について説明を受ける。麻酔の説明には日本語の通訳をつけてもらった。アメリカと言えば無痛分娩。帝王切開を除く膣分娩で出産する妊婦のうち無痛分娩を選択する妊婦の割合は6割とも8割とも言われている。無痛分娩のメリットは、何よりも妊婦が過剰に痛みを我慢することなく出産できること。そして、出産のタイミングがコントロールし易くなるので病院側にとっても利点は大きい(と思う)。

無痛分娩で使われるエピデュラル(epidural, 硬膜外麻酔)を打つかどうか確認を受けた。epiduralを入れるタイミングは子宮口が5cm開いたときとよく言われるけれど、妊婦が望めばもっと早い段階で入れることもできるらしい。そしてepiduralを早い段階で入れてしまうと、遅いタイミングで入れたときより陣痛が長引き、場合によっては帝王切開に切り替えになるという説があるけれど、無痛分娩から帝王切開に切り替わったケースにおいて、epiduralのタイミングは相関が無いという調査結果もあるようだ。つまり妊婦の好きなタイミングで入れていいよということ。

私はできれば自然にやりたかったのと、epiduralを入れたら透明な飲み物以外は摂れなくなると聞いたのでもう少し耐えることにして、「早く使っちゃえばいいのに。痛いんでしょ?」というナースの視線を感じつつ、昼食のデリバリーを頼んだ。

病院内のカフェテリアからデリバリーが届いたのが11時頃。胎児の頭が背中側に寄っていたため、この頃の陣痛はひどい便秘ででっかいうんこがゴリゴリと会陰の辺りに降りて来るような痛みになっていて、陣痛が来るたびに(何も出ないのに)トイレに駆け込んでいた。便座のようなものに座らないと逃せない痛み。陣痛、聞いてはいたけどやっぱり痛い。急いでオレンジジュースとサンドイッチをお腹に入れて、ナースを呼んだ。このとき陣痛は6分おき、子宮口は6cm。epiduralを入れて下さいとお願いすると、ナースは心なしか笑った気がする。

12時。epiduralが入ってしばらくすると、スーッと痛みが無くなった。まるで魔法。モニターを見ると陣痛の波形は変わらず続いている。epiduralまじすげぇ。「子宮口が10cm開くまでそのままでいてね」と言い残して去って行った麻酔医とナース。さぁ、ここからがepiduralの腕の見せ所。頼りにしてるぜepidural!

日本のような自然分娩だと、子宮口が開ききるまでの長時間、間隔が短くなる上に痛みが増していく陣痛とじーっくり向きあうことになるけれど、無痛分娩だとただの昼寝時間になる。昨日全く眠れなかったのでスヤスヤと爆睡した。

午後5:30。子宮口は9cm。ナースが来て「産科医は今他の患者のC-section(帝王切開)をしていてここへの到着が6:00になるから、6:00から出産にしましょう」と陣痛促進剤を入れたり、破水させて羊水を半分ずつ出したり、出産に向けた準備が始まった。羊水は500ml、400ml出た。(ちなみにアメリカは重さをポンド・オンス換算、長さをフィート・インチ換算するのに子宮口はcm、羊水もmlで計量していてちょっとびっくりした)

産科医が来るまでの間、ナースが暇そうにしていたので「日本では自然分娩が一般的で推奨されていて、痛みを感じることが良いこととされている」と話したら、「あなたは子宮口が6cm開くまで痛みに耐えたのよ!みんなもっと早くepiduralを入れるわ。そんなに我慢できるなんてすごいことよ」と何故か激励されたので、”epidural is awesome.”と返した。ナースはまた笑ってくれた。

午後6:15頃、産科医が来て、いよいよ出産になった。「早ければ1時間、長くても3時間で終わるわ」とナース。

1)大きく息を吸う。
2)息を止めて胎児を外に出すべくいきむ。10秒間。
3)息を急いで全部吐く。

1-3を陣痛のタイミングで3回繰り返す。いきむ際に両膝を裏側から自分で抱えて持ち上げるというのが、なんか原始的だし合理的だと思った。(日本だと何もつかまないように指導されたりしますよね?)この頃になると陣痛もかなり大きな痛みになっていて、麻酔をしていても陣痛がかすかに分かるので、ナースから合図されなくてもいきめた。

「頭が見えたわ!髪の毛で真っ黒よ!」
頭のてっぺんが出てきたらしい。触ってみたら確かに髪の毛の感触が。いきむたびに少しずつ身体が出てきて、途中でパチンパチンと会陰切開する音がして、夫が恐る恐るへその緒をカットして、どぅるるるん!と私の胸の上に生まれたてほやほやの息子が乗っけられた。予想以上に肉付きがよくぷりぷりして、確かに黒い髪の毛がびっしり生えて、ふぎゃ!ふぎゃ!と赤い顔で泣く息子を見て、つい「可愛い〜(涙)」と泣いてしまった。だって、本当に可愛かった。出産ハイだったのかな。

いざ出産、となってから1時間かからず生まれた。管楽器奏者あるあるかもしれないけど、腹式呼吸が上手くできるのでいきむのも上手にできた、と思う。
身体を拭かれて体重や身長、頭囲を測った後、再度胸の上にやって来た我が息子。もそもそ動いてなんとか私の右の乳首にくいついた。「これ、ビデオで見たやつ!」と思った。生まれてすぐの赤ちゃんは腹這いで移動して、おっぱいに吸い付く。本能というか反射というか。母乳が出てるのか心配だったけど、「初乳は出るものなのよ」とナースが言ってたので多分出てたんだと思う。そう信じたい。

L&Dで2時間くらい休んだ後、ナースに支えられてトイレへ。epiduralがまだ抜けきれておらず下半身がふにゃふにゃ。会陰切開の傷がふさがるまで、しばらくビデ洗浄とパッド装着が必須になる。その後、私は車椅子に乗って、生まれたばかりの息子は小さなベビーベッドのようなキャスター付きのケージに乗せられて、病室を移動した。付き添いの人用の簡易ベッドがついた個室で、これから濃密な二晩を過ごすことになる。(つづく)

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これが出産前日にごりごりと終わらせたタイトル入れ作業の写真です↓
ボリショイsuzumiki 音楽劇「ごろごろにゃーん」、DVDの発売をお楽しみに◎
多分今年の年末年始には発売できると思います!予定!

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